死んだ夢★



家族が泣いていた。死後もこの世界に僕はいた。
僕はバイト先の窓から転落して死んだ。胴体が真っ二つだった。
でも僕は普段と何ら変わらないようにこの世界にいた。
普段と何ら変わらないように携帯をいじってた。

携帯の電波の動きで家族に存在が悟られた。視線は合わないが語りかけてくるので携帯をいじって存在をアビールした。
やっぱり霊はいるんだ、というような思い通りのリアクションをしていた。この事実をより多くの人に広めたいとも思ったが、何よりこの事実に困惑しているのは僕だった。
死後もこの世界に留まっていることが信じられなかった。
死んだら訳の分からない半透明体となって一生この世に留まり続けるのだろうか、まあ慣れ親しんだこの世だから不満は無かった。
これから何をすれはいいのだろう。

僕は思い立ったように思い出の地や出身校をうろついた。
あの頃の記憶をなぞる様に。

友達とやんちゃをした思い出の地、皆で旅行に出かけた思い出の地、喧嘩で苦い思いをした因縁の地すらも懐かしかった。

全ての地に当時の僕の存在が投影され映し出されているようだった。しかしこの世に留まる時間が長くなるにつれて、僕の行動パターンは普段と何ら変わらなくなっていた。携帯をいじりニュースを見るのが日課、たまに散歩で本屋に行き、祭りがあれば参加し、夜は自宅・・・いや、なぜか自宅には留まってなかった。

死んだからなのか夜の方が活発で居心地ちが良かった。思い出の地巡りもほとんどが夜だ。日中は建物内にいることが多かった。

バイト先にも行ったが、ここで奇妙な体験をした。バイト先の先輩が霊感があるのか、僕の存在を認知して普通にバイトの手伝いを促してきた。もちろん困惑した。手伝う気はなかったが、トイレでサボってると怒られた。

僕は徐々に記憶が弱くなっていることに気づき始めた。もっとうろつきたい、そんな思いも消え始めていた。

ここで悟った。この世に留まれる時間ににはリミットがある。

僕はこれからどうなるのか本能的に悟ってしまった。まだ間に合う。
僕は携帯を手に取りブログを更新した。人生で最後の更新だ。

いや、人生は既に終わっているか。僕は死んだら人はどうなるのかを誰かに伝えるために書き綴った。
しばらくは普段と何ら変わらないようにここに留まる。心の準備期間なのだろう。
しかし長く滞在するほど本人の意志とは裏腹に、この世への執着心や思いが消えていく。どうでも良くなってくるのだ。
記憶すらもぼやけてくる。僕は既にこの段階にいた。
もっと留まっていたかった。

間接的だけど家族にも認知されてることが嬉しかった。思い出の地を巡れるのが嬉しかった。
もっとこのよに留まって遊んでいたかった。
しかし裏腹に興味はなくなってゆく。

それは眠い人が睡魔に負けるように、抗いきれないものだった。

僕はこの世から消える。恐怖は無かったがこの世を離れる寂しさと、今までの家族への感謝の気持ち、この世への名残惜しい気持ちが渦巻いていた。

しかしこの感情はどこかで経験したことがある・・・僕は何度も経験しているような気がしていた。何度もこの世を離れる寂しさを経験しているような気が・・・

ふとすると僕は暗闇の中にいた。。。ここは・・・僕はこの時もなお、自分は死んでいる と思っていた。

しかし僕は布団の中にいただけだった。

生きていた。ただの夢だった。あっけにとられた。

本当か信じられずに手足を動かしてさえ確認をとった。こっちが夢であっちが現実であると思ってた。思いたかった。いや信じられなかった。僕は成仏の間際に人生が何たるかを悟り、感情も体感した。

なのに生きていた。

壮大なドラマのオチが「夢オチ」だったかのような脱陸感を感じ、しばらくは何もリアクションできやかった。

今こうやって日記を書いているが、今でも変らない。僕はもうひとつの、違う世界で、もうひとつの人生を終えてきた。人生を二回経験しているような気持ちだ。

こっちの人生では後悔の無いように、未練の無いように、精一杯生きていたい。

所詮夢だろうが、あの時の感覚は本物だった。死んだら本当に経験する過程のようだった。この夢をこの時期に見たこと自体が不思議だった。

一番苦しくて、生きる意味を見失いつつあったこの時期に、まるでチョイスして見せられているかのように、何かを気付かされる夢だった。

人生には影で操るシナリオライターみたいなのがいるんじゃないか、と思った。僕の今の苦境に対して、何かを気付かそうとしているような夢だった。この夢は僕の人生に置いて最も印象的な夢になるだろう。人生の最期を体験してしまったのだから



ABOUTこの記事をかいた人

1人旅をこよなく愛する暇人。自然と動物が好き。知識なしで会社経営を始めて現在泥臭く奮闘中。投資経験ゼロから半年で10万円を3200万円に!元ひきこもり時代を経て現在格闘家。なんでもやってみて案外なんとかなってる人。